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ある真夜中、インターネットラジオを聴きながら本を読んでいると、突然、全身がビリビリとする衝撃が走った。ぱたり、読みかけの本を閉じ、ラジオから流れるサウンドに耳を傾ける...。たった数秒で、私は完全に別世界へと浮遊していた。


エコーがかったシンセサイザー、透明感のあるギター、そして美しいハーモニーの重なり。メロウでスペイシーなサウンド・サーカスは、究極のリラクゼーションと温かさに満ち溢れている。Yume Bitsu、なんとも不思議な響きだ。バンド名も一筋縄ではいかない...。その直後、Yume BitsuとHochenkeit(CalifoneとはRoad Cone Recordsのレーベル・メイト!)のジャパン・ツアーに関するニュースを知って驚嘆!偶然にしては、あまりにできすぎたストーリーと思いつつ、すぐにチケットを購入した。


アダム・フォークナー、下北沢シェルターにて 8月3日、東京・下北沢シェルターでのライヴ、目を閉じて、ドリーミー・サウンドが身体を突き抜けていく、なんたる至福の瞬間...。
Yume Bitsuのサウンド・キーとも言えるインプロヴィゼーション、顔を伏せ、エフェクターをがちゃがちゃいじっているアダムが視界に入る。「どんなサウンドがスピーカーから流れてくるのだろう?」そう思うと、彼の姿に見入ってしまった。
photo/ U.Furukuni


Yume Bitsuはステージで、ハプニング(つまりインプロヴィゼーション、まるでサイケデリック・ジャム)から生まれるカオス的で、美しいサウンドを、サウンドそのものに戯れてクリエイトする。また、彼たちの創造から生まれたスピリチュアルな鼓動を、我々は揺らめきながら、ダイレクトに感じ取れた。それゆえ、音響系バンド、その一言では決して片付けられない、ディープな魅力がYume Bitsuにはあると言えるだろう。


今春、K Recordsよりリリースした『The Golden Vessyl of Sound』は、まさにYume Bitsuのアート・クリエイティヴィヴィが、彼たちの哲学的思想と溶け合い、サウンド・フォームになった素晴らしい作品である。未聴の方は、是非、彼たちのドリーム・ワールドを身近に感じ取っていただきたい。今回は、日本人の血が1/4入っているというYume Bitsuの中心メンバー、Adam Forknerに話を聞いた。





●あなたのお父様は、ジャズプレイヤーと聞きましたが、どのような音楽バックグラウンドで育ちましたか?


僕は音楽一家に生まれたんだ。キッズの時に、トランペットを初めてプレイした。それからベースとウッドベース、そしてギターとドラムにトライした。父はカリフォルニア州モンタレーのローカル・パブやレストランで、ジャズをプレイしているんだ。


●やはり幼い頃から音楽が身近にあったのですね...。では自分の音楽をクリエイトする上で影響を受けたアーティストを教えてください。


ブライアン・イーノ、キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、ペイヴメント、ニルヴァーナ、ソニック・ユース、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、FLUXUS Art Movement、もうたくさん、たくさんいるよ!


●バンド名のYume Bitsuとは、日本語でDream Beatsだそうですが、これはどこから取ったのでしょう?


Franz(Prichard)が夢を見て、その夢の中で、『夢』という言葉がずっと現れていたんだ。『ビツ』という言葉は『音』同様に、『米びつ(ライス・コンテナー)』的な意味合いもあり、Yume Bitsuって、『夢の容器』でもあるんだよ。


●なるほど。Yume Bitsuという名を耳にした時、実際「米びつ」を連想したのですが、まんざらではなかったのですな。(笑)では、あなたにとって究極のドリーム・サウンドとは、どのようなものですか?


ディープなリラクゼーション、開かれた海、四季の移り変わり、過ぎ去る時間の空虚感、生きていること、そして僕たちの時間を感じること、そんなサウンドだよ。


●サード・アルバム『Auspicious Winds』は、日本の茶道を引き合いに出しているようですが、これはどのような意味なのですか?


それは必ずしも真実じゃないけど...。茶道(裏千家)では、お茶会の時に、詩的な名前を茶杓につける。これらの名前はたいてい、禅に関する詩や巻物からきている。伝統的な茶杓の銘で、「早春」や「春風」を想起する3月中旬に使われるものに、Auspicious Windというのがあるんだ。


●なるほど...。コテコテ日本人の私より、あなたは日本のことを知っていますなぁ...。では日本文化のどこに惹かれますか?


僕は日本人の血を1/4ひいているんだ。祖母はいつも、日本のルーツを僕に強く言い続けている。だからアメリカでは、白人であるよりも日本人であると感じるんだ。僕の髪はダークだし、他のアメリカ人に比べて背が低いから。でも日本ではとても白人に感じたよ!Franzはカレッジで、日本語と日本文化を勉強したんだ。それでJETプログラムに参加して、1年間(1999 - 2000)日本で英語を教えていた。君はアメリカ文化の何に惹かれる?日本ではアメリカ、アメリカでは日本、このような二面性があるってことさ。


●K Records とサインしたきっかけは?彼たちとは良い関係を築いているようですが。


K Recordsとはサインもしていないし、ディールも結んでいない。彼たちはとても自由で、僕たちは皆、友人同士なんだ!カルヴィン・ジョンソンは、とても仲の良い友人だよ。彼はDub Narcotic Studioを使用させてくれるし、僕は彼が制作するレコードを、時々ヘルプしている。時には彼の家に数週間ほど滞在して、レコードを聴いて楽しんでいる。グレイトなことだよ!


●最新アルバム『The Golden Vessyl of Sound』は、やはり Dub Narcotic Studioでレコーディングしたのですね。


うん。そこは家族が集うような場所なんだ。ヒッピー・コミューン、またはアンディー・ウォーホールのファクトリーみたく、誰もが集まってくるのさ!


●このアルバムを制作中、あなたは何にインスパイアされましたか?


スタジオに存在する家族的なヴァイブレーションと連帯感、どのくらい僕たちは一緒に音楽を作っているか...夏から秋へ天気の変化...。それらにインスパイアされた。


●では、Yume Bitsuの音楽は、何を理想としているのでしょうか?


僕たちは人々が生きているってことを思い出して欲しいんだ。僕たちは人々にベターな気分になって欲しい。僕たちの音楽は人々がお互いを認め合う、おまじないのようなものであって欲しい。愛と理解に溢れた、平和的な未来をクリエイトしたい。僕たちの音楽で戯れて欲しい。眠りに落ち、そして生きているってことを感じるために。


●なるほど...。とても文学的であり、哲学的に感じます。次に、アルバムにはソング・タイトルがないですね。


うん。このアルバム・タイトルは、全てのソング・タイトルを1つにしたものだから。僕たちはこのアルバムを、最初から最後まで、トータルで聴いて欲しいと思ってね。


●では、このアルバム・タイトルは、どのような意味があるのですか?


『The Golden Vessyl Of Sound』は、僕たちが創作したDryystn という土地についての神話の一部だよ。それは木の都市なんだ。『The vessyl Of Sound 』とは、平和と理解に満ち溢れた、Dryystn の人々のみプレイできる楽器なんだ。


Yume Bitsu info & Bio
http://www.yumebitsu.com



●Dryystn ...。Yume Bitsuの桃源郷...。とても幻想的な響きですが、これぞ、あなたたちの世界観の一部なのですね。さて、Hochenkeitとのジャパン・ツアーはどのように実現したのですか?


前にも言ったけど、Franzは以前、日本に住んでいて、Hochenkeitのメンバー半分は、現在、日本に住んでいる。ニシエ(彼たちの友人)とHochenkeitが、ゴールデン・ウィーク中にこのツアーをセットアップしたんだ。とても楽しかったよ!


●日本でプレイして、また日本のバンドと共演した感想は?


日本は大好きさ!日本のローカル・バンドは、アメリカのローカル・バンドよりも数段素晴らしいよ!アメリカでは誰もがバンドを組んでいて、さほどシリアスじゃない。一生懸命トライしないし。日本でバンドを組むってことは、とても重要でシリアスなことなんだ。まぁ、東京は大きくて、人が多くて、いいのかわるいのか、だけど。


●Yume Bitsuは7月4日(独立記念日)に、アトランタで行われたショーに招待されたそうですが、このショーには、Steve Malkmus、Jicks、J.Mascus、Ugly Casanovaなど、そうそうたるメンツが揃いましたね。


そのショーは...、本当にどうしようもなかったよ...。誰も見に来なかったんだ!みんな家でバーベキューをしていたのさ!


●えっ!そうなんですか!(笑)私だったら、バーベキューより、ライヴを取りますよ!では、ポートランドにあるThe Blackbirdについて教えてください。このクラブで7月に、Yume BitsuはJohn Zorn、Quasi、Jackie-O Motherfucker、Hochenkeitとプレイしたそうですが。 それもフリーとか!


John Zornはプレイしていないよ。(笑)これは1981年に、彼が書いた作品をプレイしたんだ。即興演奏ゲームだよ。ポートランドの全てのバンドが、招待されてプレイした。The Blackbirdはポートランドのバンドにとって、グレイトなクラブだよ。アメリカにおいてポートランドは、音楽に関してベストな都市さ!僕はBirdnesという家に住んでいる。ここには、Little Wings、Bobby Birdman、Peace Harbor、the Graves...、他にも多くのバンドが住んでいるよ!


●音楽コミューンですね。では最後に、これからの予定は?


Yume Bitsuは、絵、ストーリー、そして音楽が一緒になったCD付きの本を作るかもしれない!それから僕は、 The Badger King のメンバーである友人と、クラブでエレクトロ・ミュージックをプレイしている。僕たちのバンドはY.A.C.H.T./((VERSION))_s_t_e_p_s_って言うんだ。それからLittle Wings やBobby Birdmanともジャムっている。そして The Vesseyl というアーティスト・グループも運営しているよ。


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